周知のように、Myriad
Genetics社の遺伝子特許に関し、2010年3月、地方裁判所のRobert
Sweet裁判官によって特許性なしの判決が下されて以来、遺伝子特許に関し米国では賛否両論の飛び交う議論がかわされています。
Myriad事件については、その後、米国連邦巡回控訴裁判所
(Court of
Appeals for the
Federal Circuit)
に対してアピールがなされていますが、2010年10月29日付で米国司法省
(the United
States
Department of
Justice)
が本件に関しamicus
brief (アミカス・クリエ・ブリーフ(意見書))を提出しました。
このブリーフの冒頭で、司法省は、遺伝子の機能解析及び単離に関する特許性についての判決は、国家経済、医療科学、公衆衛生にとって非常に重要なものであり、米国特許商標庁(USPTO)、国立衛生研究所(NIH)、米国司法省独占禁止局、疾病対策予防センター、科学技術政策局、および国家経済会議をはじめとした様々な連邦政府関係機関の見解および責任に影響を及ぼすものであることを述べた上で、単離遺伝子の特許性を否定すべきであるとする見解を述べています。
米国司法省が提出したこのブリーフでは、以下2点が論点として提示されています:
1.cDNAのような人工のDNAは特許法§101により特許対象となりえるか
2.修飾されていない単離DNAは特許法§101により特許対象となりえるか
1982年に遺伝子関連特許が認められて以来、USPTOは遺伝子関連特許出願に係る発明の特許性を認める理由として、合成DNAをはじめ、修飾ゲノムDNAではない単離DNA分子は、自然界において単離された状態で発生することはないことを挙げてきました。
しかし、今回提出されたブリーフでは「遺伝子は自然の状態において自然に分離されることはない」という事実のみををもって特許性を認める、ということはできない」と主張しています。具体例として、土壌にねむる石炭や綿実と混ぜられた綿繊維、またはサフロンの柱頭等は自然の産物ではあるが、利用可能な状態となるには自然に起こる環境から単離されなけばならないことを例にあげたうえで、これら石炭、綿およびサフロンは自然の産物ではあるが、一方で特許性がないものとすることに疑問を感じる人はいないと論じています。
ただし、全ての遺伝子関連発明に特許性がないと主張しているわけではありません。産業上の利用可能性がある遺伝子の特定・単離・抽出の方法、もしくは遺伝子の用途および遺伝子情報に関しては、Bilski事件の判決で用いられた特許性判断基準に則り、ゲノムの人工的トランスフォメーション(変化)もしくはマニピュレーション(操作)を要するとの見解を示しています。遺伝子組換治療、工学生物学的製剤、植物特性の改良方法、バイオ燃料の生成方法、およびこれらのようなバイオテクノロジーの先進的な適用は特許法により保護されるべきであるが、特許法101条の要件を満たすには、どんなにそれが困難で有効であろうとも、自然界に存在するものを特定や単離するだけではなく、それ以上の何かが必要であるとの見解をブリーフで示しています。
USPTOと全く逆の見解を示した大変興味深いブリーフであり、今後、どのように取り扱われるのかに注目が集まっています。
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